昭和36年10月29日における伊勢神宮奉納全国古武道大会の演武会場(伊勢神宮如雪園内相撲場)。前面の向って左から、國井善弥*(師範家十八代)、國井義之(善弥師次男)、關文威(師範家十九代)

* : この写真に見られる様な、和やかな國井善弥師の写真は極めて稀である。善弥氏は日本神道の修霊修行も極めていたので、人への対応は鏡のようであった。したがって、宮家や華族、あるいは優れた知識人に対しては、知識人(大正2年 福島県立農学校 卒業、昭和10年 日本大学皇道学院 卒業: 大日本帝国陸軍戸山学校講師などの教職を歴任)としての気品ある対応であったが、粗野な相手に対しては相応な言動であった。この様な相手の品性に相応な対処は、武術の立合いにおいて全ての達人や名人が行なうところである。ここにおいて、善弥師への面会印象の記述は人それぞれ多様であるが、その記述は善弥師の品位を示しているのではなく、著述者の本性を示している。善弥師が品位ある教養人であった証は、品性ある高名な武道家との他流試合においては、破った相手の姓名を自らは他言せず、内弟子の側近のみが知るところである。

(解説 師範家十九代 關文威)